彩のイメージ
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恋と向日葵
40歳を過ぎても恋をしたがる。
私は見た目も若いし、顔もかわいい。
色目を使っては若い子に声をかける。
恋といってもこの子達と歳の変わらない子供もいる。
私にとっては遊びだった。

隣のフラワーショップはよくアルバイトを入れ替える。
なんでもお花屋さんは今若い子がやりたがる職種らしく
店長さん曰く興味本位で入ってくる子が10割だそうだ。
店長さんはとても温厚な人で、私より一回り若い。
「愛がなきゃ」が口癖だ。
花はその姿に人の心を反映させるという。
花屋が花を育てる仕事ではないということも初めて知った。
ただ環境を整え、水をやっていればいいというものでもないらしい。
愛無くして花に接する人を店長は見ていられない、というのが主な原因だが
短い子は1ヶ月続かない。
思ったよりも大変なんだろう。
見ててわかる。
細かな気配りのいる仕事だ。
店長は独創的で芸術性の高い仕事だ~、とアーティスト気取りだけれど。

長い子は4年続けている。
28歳のヒマリ君だ。
名前が向日葵に似ている、という理由のみで雇われた子だが(この頃は店長もバイト選びを投げていた)
この子が一番優しく花に触れるらしい。
そして優しいだけでは花がいい顔を保てないことを彼はその歳で悟っているらしい。
私もよく見かけるが内面の優しさが仕草やファッションからも見て取れる。
話しかけたことも何度かあるけど、ほんとにふわりと会話を交わす、彼が花のようだ。
甘い匂いがするんじゃないか?
私が抱きついたりしたらどんな反応をするだろう。
そっと触れてみようか。
冬、彼に近づいてみようと試みた私は打ちのめされる。
彼の、私の思わせぶりなモーションを避ける時の優雅な身振り。
かすかな期待を一片残して断る、言葉の選び方。
私は諦められなかった。
そう彼が仕向けたのだろう、まんまと彼の渦に巻かれている。
彼の波は、心地が良い。
温く、優しく、刺激的だ。
私は自分が可愛いと思っている。
愛嬌だけでやってこれたと思っている。
モーションはもう感覚的なもの、よほどの自身を持っている。
彼の前で私は子供だった。

先月、新しい子が入った。
アラガキ君という20歳の学生だ。

「店長、おはよう、今日はシナモン入れないんだよね」
「うん、ありがとう、お金帰りに渡すから」
「はーい」

自身満々の笑顔。
横目で奥を覗けば新人もこっちを見ている。
毎日コーヒーを持ってくる私に頭を下げるようになった。
私はニコリと微笑んでお腹の黒雲を呼び寄せる。
黒雲からひょっこりと顔を出した悪魔。
「アラガキ利用すればいいじゃん、外堀から崩さなきゃなー」
私の中に、それに反論する善の象徴はいない。
「見なよ、アラガキの顔、お近づきになりた~い顔だろ、あれは、バカじゃん」
「午後に、差し入れーとか言って無駄に濃いエスプレッソでも出しな、大人の女性だ~とか思われるだろ」
「待ち伏せは最後、そこまでやる必要ないだろ、外堀ごときに」
「若さ=バカさ、あはは」
次から次へと囁きかける、私の中は真っ黒か?

センスの無いバイクで、迷惑な自己主張。
死ね、うぜー、やべー、が口癖。
お花屋さんやれば女の子にモテるのか?
外堀は予想以上に質が悪かった。
人手不足だったとはいえ、店長もえらいのを雇ったもんだ。
店長の前ではいい子ぶってるんだろうか。
私の前ではいきがっているんだろうか。
まぁ、仕方ない、ヒマリ君に触れる為だ。
「アラガキ君、背高いね~」
「アラガキ君、こないだお花選んでくれてありがとね」
「アラガキ君、帰りにちょっとお店寄ってくれる?」
ちょっとずつ時間をかけて引き寄せる。
たまにぐっと勢いよく引き寄せる。
釣りかよ。
獲物は単純なほどに釣られている。
実際、外堀からヒマリ君の話を聞きだせるようになった。
「ねぇねぇ、ヒマリ君ってどんな人?」
アラガキの話し方は他人のことをあまり良く言わず
自分を良く見せるずるい話し方だった。
イライラしながらも笑顔で応え、ヒマリ君のことを知っていく。
アラガキに慣れてきた私は、自然にアラガキの肩に触れたりする。
おいおい、それで含んでるつもりか?
こぼれ出てるぞ、ニヤニヤ笑いが。
こーゆー男だ、私と仲がいいと話しているに違いない。
ここまですれば話さなくとも周囲は気づく。

私の描くシナリオはこうだ。
私は打ちのめされて以来、ヒマリ君には淡白に接している。
もう少し歩み寄っていれば普通に話せたのかもしれない、という罪悪感らしきものを感じさせる。
そのもう少しの距離を縮めさえすれば私の間合いになるかもしれない。
あわよくば、嫉妬させる。
言ってはいけない言葉、隠して持っている感情、淡い期待。
彼はその辺をきっちりと施錠して閉じ込めている。
嫉妬はそれをするりと引き出す潤滑油だ。
彼が私のことを考えるその一瞬に、気づきさえすればいい。
ヒマリ君に再びのモーション、アラガキをここにきて引き離す。
露わになる安い男の嫉妬の矛先はもちろんヒマリ君。
アラガキの口から私の一部がちょっとずつヒマリ君に伝わってゆく。

私の予想、二人の会話。
ヒマリ君 「あの人と仲いいんだねー」
アラガキ 「え?そうっスか?(笑)」
ヒマリ君 「よく二人で話してるの見かけるよ?」
アラガキ 「別に仲良くはないっスよ、話しかけてくるだけですよ~」
とかなんとか、ヒマリ君も微妙に私のことを意識してるはず。
これは勘でわかる。
ああいうコは、意識しないでいろんなところにアンテナを伸ばしているタイプだ。
アラガキはアラガキなりに調子に乗っているはず。
これは勘じゃなくてもわかる。
あれは内側で下半身のアンテナを伸ばしているタイプだ。
私は私で思わせぶりな行動の結果、ヒマリ君が接近してきたところで動揺せず
私はそうでもなかったよ?といった感じで、クールに装う。
装いながらも近づいたその距離を常に保って、内側ではハンターの目つき。

3日前、事件が起きた。
近所のスーパーで可愛らしい模様のエコバッグを肩にかけて
野菜をじーっと見つめるヒマリ君を発見。
その横にぴたりとくっついて小柄な女の子。
ヤバイ、彼女か?
これは相当なダメージだ。
私がとってきた態度を思えば、こんなところで声をかけるわけにもいかない。
逆効果だ。
得意の技術的な攻撃も、手を出せなければ意味がない。
いや、挨拶をして彼女かどうか確認するくらいはできるか?
いやいや、野菜だし、今日のおかず的なノリだ。
そしてあの自然なくっつき方。
ムカツク。
私は私が不利な立場になるのが大嫌いだ。
私が回転の軸になってないとイヤだ。
このまま見過ごすのはやりきれないけど、仕方ない。
今晩、悶々として対策を練るのだ!
見てろ、ヒマリ。

↑これが3日前の私。
他の誰のことも頭の中にはなかった。
ひとつの恋に没頭すると、結局周りが見えなくなってしまう。
最終的には彼と私だった。
盛り上がってきたな、気持ち。
興奮して、落ち着いて、ふわふわする。
ああ、快感。
最後の選択は総合的に見て私自身がプライドを捨てられるかどうか、だった。
フラれるなんてありえない。
でも明らかに距離は遠い。
なんでこんなに焦ってるかって?
スーパーの次の日、店長に聞いた。
彼は隣町に出て自分の店をオープンさせるそうだ。
今、この状態で離れていってしまうなんて・・・。
足が震えて何も言えなかった私は、そこでやっと気持ちの大きさに気づいた。
大きな変化というか、急展開に怯えた。
子供のように駄々をこねそうになるのを堪えて、夜。
堪えることが、良くないんじゃないだろうか、と考える。
でも、その器用さでここまでやってきた。
上手な身のこなしと、私の可愛い顔の後ろに、流れはついてきた。
この状況、この今の展開では、それが通用しないことのように思える。
すべてが、自信に繋がって、余裕に変化して、崩せないプライドになってしまっている。
このプライドを、恐れに耐えて脱ぎ捨てて、私が私自身でいられるのだろうか。
相手は子供だ。
なんでこんなに熱くなっているんだろう。
ドキドキドキドキ。
ワインを飲んでも酔えないよ、何なんだ、私は。

↑これが昨日の私。
一晩寝れば冷静になるかと思ったけれどダメだった。
目覚めたらまず彼のことが浮かんだもの。
夜の続きだった。
というよりは、出会ってからずっと続いてきた恋か。
・・・・・・・。
あれ?
遊びのはずだったのにな。
お腹の悪魔も囁かない。
大事な時に頼りにならないやつだ。
私はもう、どうしていいのかわからなくなってしまった。

今日。
昼。
夏だった。
向日葵の花束は店長にもらったのかな。
私の店に挨拶に来たヒマリ君。
顔を合わせるのが怖くて、今日はコーヒーを持って行かなかった私。
ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ・・・・。
シャララ~ンと音が響いて、扉が開く。
泣きそう。
足が私の体を前へ進める。
ダメだ、ダメだ、ダメだ・・・・。
進むな、体。
近づいたら、壊れてしまうかもしれない。
向日葵の爽やかな香りが漂ってくる。
優しい笑顔だった、彼。

「お世話になりました、隣町で店やることになったんです」

知ってるよ、知ってる。
君のことはホントは全部知りたい。
何やってたんだ、私。
何やってたのか、思い出せない・・・。

「いつもコーヒーありがとうございました」

会いたかったんだもん。
毎日、毎日。
何で、遠くに行っちゃうの?
これからだって、毎日、毎日、会いたいのに。
これからだって、コーヒーを・・・・

「またこっちに来たときは寄りますから・・・」
「ヒマリ君・・・!」
「え?」
「あの・・・私・・・わたし・・・・」


秋。
まー、あの時の私は確かに私じゃなかった。
いや、あれが本当の私だったのかな。
新しい、私。
震えながら、怯えながら、プライドを脱ぎ捨てて、深呼吸。
一緒になりたいって、真面目に告白。
驚いて、ほんとに驚いた顔をして、でも、ちゃんと、静かに、優しく、断った、彼。
周りの目も気にせず、その場に崩れ落ちて、わんわん泣いた、私。
いつだって彼は優しかったから、いつだって私は素直になれたはずだった。
なんだよ、こんなの、もう、何も、考えられないじゃんか・・・。
今の私を形作っていた殻がポロポロと剥がれ落ちて、涙がこぼれる間、ずっと傍にいてくれた。
いいかげん泣き疲れて、ため息のあと、ふっと笑った私に、向日葵を一本差し出して
またね、って。
彼が店を出てから10分後、やっと冷静になった私。
一緒になりたいってのは、下手くそだったなー。

長く勤めたカフェを辞めて、お隣の花屋で働くことに快く応じてくれたオーナー。
まぁ、いいっすよ、と受け入れてくれた店長。
アラガキやお店のスタッフさんに軽く頭を下げて、笑顔。
私は、この花達と同じように愛されるだけでよかった。
ただそれだけでよかったのにな。
向日葵の季節は過ぎて去ってしまったけれど、色とりどりの花。
私はここから始めよう。
私に足りなかったのは、たぶん愛だ。
深呼吸をすれば、爽やかな香りが体内を循環する。
心の敏感な部分に、たまに触れるから、気持ちがいい。
少しでも彼に近づく為、私は、ここからだ。
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